釣り上げられたチヌ

海をフィールドとする魚は無数にいます。では、その中で、釣りの対象として一番人気があるのはなんだと思いますか? 初心者が必ずといっていいほど体験する小アジとシロギスを別格とすれば、答えはチヌです。具体的な数字がなくて納得できない人が多いかもしれませんが、関連用品の販売実績や出版数、サイトの数、訪問者数などからみて、ほかの魚よりもチヌに興味を抱く人が圧倒的に多いのは誰も否定しないでしょう。チヌの標準和名はクロダイ(黒鯛)です。しかし、チン、カワダイ、クロ、タケチヌ、ツエなど地方名は非常に多く、それだけ多くの人に親しまれていることがわかります。

では、どうしてチヌはそんなに人気が高いのでしょう。

 

最大の魅力は近場で大物が釣れることです

自然破壊は年々進んでいます。海洋汚染にもなかなか歯止めがかかりません。その影響で、大きい魚を釣ることがどんどん難しくなってきています。めったに釣り人が訪れない遠隔地まで行かないと、望むような釣果を得られなくなっているというのが現状です。

その一方で、いまだに都市部で大型が望める魚がいます。それが、チヌ、スズキ、ボラです。シーズンにもよりますが、いずれも手近な防波堤で40㎝を超えるサイズが期待でき、運に恵まれると50㎝クラスがヒットすることもあります。

チヌの人気が高い理由はもうひとつあります。姿が美しいことです。その気品に満ちた雰囲気から、海の貴婦人、海の女王などとも呼ばれています。釣り上げられた直後のヒレをピンと張った姿は特に美しく、周囲の釣り人からしばしば羨望の眼差しを受けます。ボラやスズキよりも人気が高いのはそれが理由です。

 

人気のある釣り方はフカセ釣りです

チヌという魚の生態をみると大変面白いことがわかります。とにかく好奇心が異常に強いのです。また、貪欲で、エサに対する執着心も非常に強く、そのおかげでさまざまな釣り方が楽しめます。ざっと挙げてみると、投げ釣り、ミャク釣り、落とし込み釣り、カセ釣り、紀州釣り、スイカ釣りなどがそれです。もっとも、圧倒的に人気があるのはウキを使ったフカセ釣りです。理由は軟らかい竿と細い仕掛けが使え、チヌの引きを満喫できるからです。条件によっては投げ釣りの方が釣りやすいケースもあるでしょう。しかし、重たいオモリと硬い竿を利用するためチヌの引きは楽しめません。魚が大きければそれなりの引きは味わえますが、フカセ釣りとは比べものになりません。

ただし、フカセ釣りはハードルが高く、初心者がすぐにマスターできるものではありません。しかし、だからこそ面白いのです。簡単にマスターできるようでは楽しさは長続きしません。

それは間違いありません。

 

フカセ釣りにはコマセが欠かせません

釣りの分類方法はいろいろあります。攻めの釣りと待ちの釣りもそのひとつです。では、フカセ釣りはどちらに入ると思いますか? 前述したように、フカセ釣りでは細い仕掛けを使い、さらに軽く、小さくします。つまり、細い・軽い・小さいというのがフカセ釣りの原則だと思ってください。例外はありますが、ハリスや道糸は細く、針は小さく軽く、オモリも小さく軽い方が平均して魚の食いはよくなります。それが災いして、仕掛けを遠くへ飛ばすのには向いていません。一般的には、釣り人から30mの範囲が攻めることのできるエリアといわれています。

では、そのエリアには必ずチヌが潜んでいるでしょうか? その確率はゼロとはいいませんが、可能性は低いとみていいでしょう。そのような状況でどうすればチヌが釣れるのかというと、コマセで自分のエリアに誘い込むのです。コマセとは海に撒いて魚の活性を高め、投入箇所に集め、さらには足止めするためのエサです。これはフカセ釣りに特有のもので、他のジャンルで用いることはまずありません

内容はオキアミ、アミエビなどのチヌが好むエサが中心で、それに撒きやすくするための配合エサを加えます(必ずしも必要というわけではありません)。これを海底に溜めてチヌを集めるというのが基本的な考え方で、流れに乗せて遠くまで匂いを拡散し、離れた位置にいるチヌを呼び寄せるという効果も期待できます。釣りを始める前にコマセをダンゴにして5、6個投入するという使い方をする人もいます。

一方、磯は海底の地形が複雑な場合が多く、海底にコマセを溜めるという方法は難しくなります。そのときはサシエとコマセが同調するような撒き方をします。堤防とは釣り方がかなり変わってきます。

 

ウキが沈むのは感動的なシーンといえます

本来、フカセ釣りというのはオモリもウキも使わない非常に高度な釣り方です。しかし、近年はウキを使ったフカセ釣りが普及し、ウキフカセ釣りという呼び方をする人が増えています。とはいえ、ここでは単にフカセ釣りとだけ記すことをお断りしておきます。

ウキを使うとさまざまなメリットがあります。潮に乗せて仕掛けを流すことが可能になり、仕掛けの位置がわかりやすくなり、サシエのタナを確保できるようにもなります。そして、最大のメリットはチヌのアタリがウキの動きで判断できることです。サシエをチヌが食って走り出すと、それまで水面に浮かんでいたウキが沈んで見えなくなります。これが釣り人の待ちに待った瞬間といっていいでしょう。

チヌは遅アワセが基本ですから、ウキが見えなくなってもさらに待ち、竿先に乗ってくるまで待っていれば確実に針を飲み込んでいます。あとはゆっくり引き寄せればチヌは近づいてきます。本来、チヌは泳ぎが得意ではないので、針に掛かった時点で勝負はついています。よほどのトラブルがない限りバラすことはありません。

 

まとめ

チヌ釣りの概要をお伝えしましたが、読んだだけでは本当の楽しさ、面白さは味わえません。実際に体験して初めて、真の面白さ、楽しさを体感することができるのです。いうまでもなく言葉にするほど簡単ではなく、自分の手でチヌを抱くまでは何度も何度も失敗を繰り返すでしょう。1日粘って1度もアタリが出ることなく終わるケースも珍しくありません。それだけに、苦労した末に釣り上げたときの喜びは比べものになりません。あなたもこの魅力的なチヌ釣りをぜひ楽しんでください。

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