テンヤ釣りとは昔から伝わる真鯛の釣り方です。
テンヤオモリとビシ糸(オモリをたくさん打った道糸)を使って仕掛けをフカせ、真鯛の食いを促すというものです。
しかし、ビシ糸を使う以上リールは使えず、水深80〜100mもの深場まで沈めた仕掛けを手で回収するのは大変な作業で、ほんの一部の釣り人にしか許されない世界だったのです。
それを解消して誰でも楽しめるようにしたのが一つテンヤです。どのような釣りなのかを解説してみました。
●海底の根周りがポイント
一つテンヤのメインターゲットは真鯛です。
真鯛が生息しているのは根(岩礁)の周囲で、船はその周囲を流します。
エサはエビを使いますから、真鯛以外にもさまざまな魚がヒットします。
当然、根につくカサゴやソイ、それに回遊魚(ブリ、ヒラマサなど)、砂地に達すればヒラメやカレイも食ってきます。
時期や場所によっては太刀魚の大型もアタります。このように、真鯛がメインとはいえ五目釣りの要素も強く、なにが食ってくるかわからないのも一つテンヤの魅力といってもいいでしょう。
ただ、注意しなければならない点があります。
なにがアタるかわからないということは、大型の真鯛や青物もヒットする可能性があるのです。
といっても、一つテンヤの特徴はライトタックルにあります。
細くて短いロッドに細いライン、軽いテンヤで楽しむというのが大前提です。
硬いロッドや太い仕掛けを使うわけにはいきません。
そのため、リールのドラグ機能を最大限に利用しなければ取り込むのは難しいでしょう。
●細い・軽い・小さいタックルが基本
ライトタックルを簡単に紹介しておきましょう。
船の上で扱う以上、ロッドは短いほど扱いやすくなります。
中心は2.0〜2.5mで、エギングロッドやシーバスロッド、キス竿でも代用はできます。
しかし、専用ロッドに勝るものはありません。
穂先が繊細でそれでいながらタメが利き、一日中持っていても疲れないというメリットがあります。
リールはベイトキャスティングでもスピニングでも可能ですが、現在は圧倒的にスピニングを使用する人が増えています。
優れたドラグ機能を持つスピニングが登場した結果です。
ラインは細いほど底を取りやすく使いやすいのですが、もちろん大物の引きに耐えられるものでなければなりません。
そこで、細くて強いPEラインがメインになっています。
一般的には0.8号が主流で、より細いラインを好む0.6号を使うベテランもいるようです。
ただ、PEにはまったく伸びがないという弱点があります。
アタリがダイレクトに伝わるという意味では長所ですが、魚の引きを和らげるショックアブソーバーの役には立ちません。
そこで、PEとテンヤとの間にショックリーダーとして2〜2.5号のフロロカーボンを結びます。
PEとフロロの結び方は面倒ですが、これは必ず覚えてください。
●テンヤとカブラ
この釣法は一つテンヤという名称で普及しましたが、実際にはテンヤもカブラも使います。
それぞれが生まれたエリアは異なり、どちらもオモリとハリを一体化させたものとはいえ釣り場の条件が違います。
テンヤは軽く、ユラユラとゆっくり沈みます。
一方、カブラは重たく、スムーズに沈みます。
といってもともに改良・進化が進み、この二者の境界は不明瞭になりつつあり、将来的にはどちらかに統合されると思われます。
しかし、現在はまだ共存しており、軽いものはテンヤ、重たい方はカブラと呼び分けられています。
具体的には4〜6号がテンヤで、主に水深10〜40mの浅いタナを釣るときに使われます。
カブラは8〜12号で、50m以上の深場に用います。
ただし、この数字は潮の速さを考慮に入れていません。速ければ重たくしなければタナを確保できないのは当然です。また、小さく軽いほど食いがいいから、浅場で3号を使うベテランもいます。
波が高く潮が速い状況では13〜15号を使うケースも珍しくありません。
●根掛かりを避けて底を釣る
テンヤ釣りの基本は海底の近くを釣ることです。
根のすぐ上まで仕掛けを落とし、シャクったりステイさせたりして真鯛の食いを誘います。
このとき、根の上何10mも上では期待できません。すぐ上であることが条件です。
ところが、根というものはフラットではありません。
起伏が激しく、それが激しいほど魚は好みます。
その結果、根掛かりが頻発します。テンヤもカブラも安価なものではありません。
根掛かりを外すのも面倒です。
そこで、極力根掛かりさせない釣り方をしなければなりません。そのためには底取り(底立ち)が欠かせません。
例えば50号のオモリで水深30mの地点で沈めたとします。
流れがよほど速くない限り、そのオモリが底に届いた瞬間はほとんどの人はわかります。
しかし、オモリが小さく、水深が深くなればなるほどそれはわかりづらくなります。
速い流れが加わるとなおさらです。前述したようにオモリは小さいほど魚の食いはいいので、できるだけ小さいテンヤで底取りできるかどうかが釣果の分かれ道となります。
オモリの荷重がかかっていと穂先は通常より大きく曲がっていますが、オモリが底に届くと一瞬だけ穂先は戻ります。
気づかずにいると再び穂先は曲がります。流れがあるのと船が移動するためです。
際限なくラインを送っていれば間違いなく根掛かりしてしまいます。
これを避けるには、10mおきに色分けされたPEを使用すると便利です。
また、カウンター機能を装備したベイトキャスティングリールも役立ちます。
一度底取りしたときに水深の目安をつけておけば、次に仕掛けを投入するとき底近くになったところでサミングし、ゆっくり沈めることができるからです。
●取り込みは焦らずゆっくりと
アタリが出るのは誘いをかけた直後のケースが多いようです。
いきなりガツンと来たり、チョンチョンと小さくアタッたりしますが、いずれも即アワセが基本です。
軟らかく短いため、大きく鋭くロッドを立てないと真鯛の口をハリで貫くことはできません。
問題はハリに掛かった魚が大きい場合です。
ライトタックルですから強引に巻こうとすると間違いなく切られます。
それを避けるにはドラグを利かせてゆっくりとやり取りしなければなりません。
といって、ドラグを緩めに設定しているとアワセが利きませんから、ぎりぎりの状態にしておく必要があります。
ハリ掛かりすればあとは焦らず、ゆっくり取り込むことを心がけます。
魚の頭が反対を向いているときは無理に巻こうとせずじっと耐えるだけにとどめておき、頭がこちらを向いたときゆっくり巻き取ります。
●まとめ
一つテンヤの魅力はなんといってもタックルの簡単さにあります。
リーダーの先にテンヤオモリを結ぶだけなので仕掛けも単純です。
テンヤ、あるいはカブラがあれば手持ちのタックルでスタートできます。
釣りそのものは単純ではなく、いろいろと覚えることはありますが、それは体験すれば少しずつ理解していけると思います。
まずは実際に釣りをしてみてその楽しさを味わってください。