トラウト用タックル

ルアーで誘う魅惑のトラウト

「ルアー」という言葉が日本で広く普及したのは、外来種のラージマウスバス(ブラックバス)フィッシング=バッシングの大流行の影響は拭えません。
それもあってか、「ルアーフィッシング」というとバス釣りを想像される方が多いようです。

しかし、日本でバス釣りがフィーバーするずうっと前から、ルアーでマスを釣ることを密かな(バスフィーバート比較して)楽しみとしていたアングラー(釣り人)も少なくありません。

 

ルアーフィッシングが日本で始まったのは、明治時代に、欧米の大使館別館が多く建てられたリゾート地としての日光・中禅寺湖畔で、駐留外交官らによって楽しまれ広がった釣り方とされています。当時の対象魚は、そのために輸入・放流されたレイクトラウト(川鱒)、レインボートラウト(虹鱒)などで、現在の中禅寺湖にもその末裔が棲み、多くのアングラーから憧れの熱い視線が注がれています。

 

ルアーフィッシングの対象となる魚種は、河川だけでなく、湖沼、汽水域、海まで広げると実に数多い魚となります。その中でサルモニダエ(サケ・マス科)に属す魚は、在来種のイワナ、ヤマメ、アマゴ、サクラマス(地域によりサツキマスとかビワマスと呼称)、そして北海道に棲むオショロコマ、イトウなどがあげられます。この他に、漁業規則によって釣りの対象魚から外されているかも知れませんが海から河川に遡上するサーモン(鮭)もいます。

一方、外来種では、レインボートラウト(ニジマス)、ブラウントラウト、レイクトラウト、ブルックトラウトなどです。

 

こうして並べてみると、ルアー対象魚は、サルモニダエだけでも結構な魚種となりますが、在来種は自然環境の条件さえよければ、河川での自然繁殖が保たれます。対して、外来種の多くは、中禅寺湖や上高地、芦ノ湖などの一部を例外として、日本のほとんどの河川や湖沼での自然繁殖は困難とされています。

何れにしても、希少な魚種であることに変わりはなく、そうした魚をターゲットとするルアーフィッシングもまた、マニアックな釣りであると言えるのかも知れません。

 

「ルアー釣りは芸術」

「ルアー釣りは芸術」とは、かの釣り好き作家の故開高健さんの言葉です。開高さん曰く、「エサ釣りは、放っておいても魚は食う、しかし、ルアーはそうとは言えず、魚がルアーを追うのは必ずしも食欲からだけじゃない」と。

ルアーで魚をヒットさせることの奥義は、ルアーフィッシングの経験を積めば積むほど奥深いことが身にしみてきますが、不思議なことに「ビギナーズラック」というラッキーが訪れる確率が高いのもルアーフィッシングの妙味であるように思われます。

 

今からかれこれ数十年も昔のお話になりますが、富山県と岐阜県の県境近くにある山上のダム湖に釣行したときのこと、その湖に注ぐ沢(と言っても幅が10メートルほどもあって水量の多い流れの速い谷川)で、赤と白い色を塗り分けた「ダーデブルロケット デブライブ」という7gのスプーンを対岸の抉れに近いやや水深のあるところを狙ってキャスト&リーリングを繰り返していたとき、不意にガツンと沈み根にフックが掛かってしまったような衝撃で、6フィートのスピニグロッドが大きく曲がったのです。一瞬、地球を釣ってしまった!、当時としては少し値の張ったアメリカ製のルアーでしたので、悔しい思いが込み上げてきたのですが、その後すぐに、全く別の感触がロッドグリップに伝わってきたのです。

「グイ、グィッ」と明らかに生き物の感触です。釣れたんだ、釣れてしまった、と感じたとき、私は足がガクガクと震えだして、嬉しいというよりも例えようのない戦慄を覚えました。

流れに逆らって逃げようとする魚をギイギイ鳴るリールを巻き、魚を無理やり寄せて、ランディングネットでキャッチするまでの間、私は何回転びそうになったことでしょう。実際、一二回は転んで、ウェーダーの中にまで水か入って、もうびしょ濡れの状態だったのです。

魚は、そのときが初めての対面だった大イワナで、採寸すると何と57cmもありました。

運よく下顎近くにトリプルフックがフッキングしていたため、外れなかったんですね。

 

その後は、もう釣りはしませんでした。興奮と雪解け水の冷たさとで震えがしばらく止まらず、湖畔に設営していたテントを適当にたたんで車に積み込むと、もう家に帰ることしか頭に浮かびませんでした。

それは。私が釣りを始めて3ヶ月目の初夏のことです。

いま振り返れば、これは「ビギナーズラック」以外の何ものでもなかったのです。

それにしても、私の周りに誰もいなかったことは幸いでした。もしも、誰かが私の慌てふためく様子を眺めていたらと想像すると、今でも恥ずかしさがこみ上げてきます。

ルアー釣りは芸術って?、開高さん、とんでもございません。ドタバタ喜劇ですよ

 

釣れないことの方が多かったルアーフィッシング

ビギナーズラックの後は、当分はスランプが続く、というのも定説のようです。私の場合もその定説とやらに違わず、開高さん流に言えば「おんぶお化け=ボウズ」に取り憑かれるというのでしょうか。川を遡ろうと、山を分け入ろうと、さっぱり魚の姿を拝むことができません。いえ、正確にいうと、魚はいてもルアーにヒットしてくれません。

 

そこで色々考えるのは人の性(さが)というものでしょうか、ルアーについてチャレンジじゃなくて「チェンジ」を試みてみました。

いくらルアーに好奇心のある鮭・鱒族といっても、不自然な金属のヘラに喜んで飛びつくものなのだろうかと思い直して、私なりに作戦を練ってみました。

水深が深くて流れの速いところは、やや重めのスプーン、渓流のちょっとした落ち込みの場所では羽根が忙しく回転するスピナー、川幅の広い中流域や流れのほとんどない湖では小魚そっくりのミノー(プラグとも)を使ってみよう。そして、サイズや重さは、投擲ポイントに合わせてフレキシブルに変えていけばいい。ただ、クランクベイトは、バスやシーバスには良さそうですが、トラウトにはいまひとつピンときません。

迷ったのは、ルアーのカラーリングです。色柄だけでなく、形にもこだわってみると、なんと、もの凄くたくさんあり、これらの一つ一つを買っていたら、私は完全に破産してしまうことも分かりました。

 

そこで、色としては、明るいか暗いかを基準に揃えることにしました。当時は、暇さえあれば釣りの参考書も読み耽っていましたので、昼間と朝夕、晴れた日と曇天や雨の日、それから雪代や大水の後の流れの濁りなどによって、ルアーの色柄を使い分けることを、本から教えてもらったのです。

さあ、これだけのノウハウを備えれば、絶対に釣れるぞっと奮い立って出掛けたのですが、その後もロッドテップが円を描く奇跡は起きませんでした。

もっとも、夢の中では、絶好のポイントを独り占めして、群れなす鮭・鱒を釣りまくったのですが、いま回想すれば夢うつつ、何が現実で何が夢であったのかの記憶すら定かではありません。

 

なごり雪に付き合ってくれたブラウン

全くと言って良いほど釣れないシーズンが終わった翌年の春、私はスピニグロッドを7.6フィートに変えました。7.6フィートは、ルアーロッドとしてはロングロッドです。そして、このロッドはどちらかというとライトクラスのベリーアクション(胴調子)で、湖や川幅のある川で、ミノー(プラグ)などをキャストするのに向いていました。同時にリールも新調し、さらにスプールを買い足して、装着スプールには、ナイロンの6ポンドライン(6Lb)、もう一つは予備として同じくナイロンの8ポンドライン(8Lb)を巻きました。もちろんルアーは、始めた当初よりも34倍くらい増えて、それらを収納するための専用ボックスまで買い足しました。

これだけのタックルを揃えたのです。これでも釣れなかった、私にはルアーフィッシングの才能が無いということになります。その時はきっぱりと諦めて、「フライフィッシング」に転向します。実際に、それから数年後、私はフライフィッシングも始めました。

 

かくして解禁一番に向かった先は、長野県南西部にあるダム湖です。この湖では、ワカサギが春の一時期、湖岸の浅場に群れて産卵をします。それを狙って、レインボートラウトやブラウントラウトなどの大型の鱒が浅場に浮いてくるのです。

当時、湖のほとりにあった一件の食堂(宿も営業されていた)の天井には、恐ろしく大きな魚の魚拓がびっしりと貼られていました。これをみるだけで、ただただ圧巻です。まるで今にも、そうした魚が釣れそうな気がしてきます。

 

私が向かったのは三つある湖への流れ込みの一つで、過去にメートルクラスの大型ブラウンが釣れたという伝説の場所です。

入渓した時は、雪が降り出していました。ちょうどその頃、フォークシンガーのイルカさんの「なごり雪」という歌がヒットしていて、その歌を口ずさみながら崖を滑り落ちるようにして川縁へ急行しました。幸い、この天候のせいか先行者は一人もいません。今日のポイントは私の独壇場です。

ロッドは新調した7.6フィート、スピニンクリールには6ポンドラインが巻いてあります。そして、肝心のルアーは、背の部分が黒く、銀色ベースの腹の一部には赤いぼかしが入っていて、胴体は前後に分かれているのをジョイントでつなぎ、リーリングをすると微妙な動きをするミディアムランナーのミノージョイント5cmを選びました。これは、鱒達が狙うワカサギに似せたつもりですが、実際のワカサギはもっとスリムなのです。まあ、当時のミノーとしては仕方がありません。

雪代で笹濁りが始まりかけた流れ込みは青白く、とろりとした感じで、いかにも何か怪物でも飛び出しそうな雰囲気が漂っています。

 

一投してリーリングすると、深いところから何か浮き上がってきます。ルアーを追ってきます。魚です。大きいです。

しかし、跳び付きません。リーリングを止めると、魚はすぐにUターンして深淵に消えてしまいます。二投目、三投目も同じです。魚はルアーと間合いをとって追うだけです。

とうとう、4投目にもなると、魚はルアーに関心を示さなくなったのか、魚影すら確認できなくなりました。

また、ダメか

ルアーを変えてみることにしました。今度は金地のベースに赤のラインを描いたスリムなウィローリーフタイプのスペシャルスヌッセン7gのスプーンです。これを投擲して、少しカウントダウンさせて魚が潜んでいる深いところの沈み根付近を狙うことにしました。

少し上流気味にキャスト、少し間をおいてスプーンが沈んでから、根回りを通過するようにロッドテップで半円を描くようにしながら巻き上げます。早すぎても遅すぎてもいけません。

「グィッ!」ときました。すかさずロッドを少し煽って、フッキングします。重い、強い引きです。これはビッグサイズ間違いなしです。

ランディングネットにかろうじて半身を収めたのは、82cmのブラウントラウトでした。

いつの間にか雪は止んで、樹々の間から青い空がのぞき、陽射しも差し込んできました。どうやら、長い冬は終わったようです。

 

最後に、トラウトのルアーフィッシングは、椅子に掛けてするものではありません。釣り方やルアーや、タックルの特徴をあれこれと説明するよりも、まずフィールドへ出て、ロッドを振ってみること、釣れれば何もいうことなし、仮に釣れなくても良いではありませんか。

大自然の懐を流れる水面にそっと近づいて、ロッドを振る、ルアーを飛ばす、流れの中で命あるもののように煌めくルアーを引く、その繰り返しがルアーフィッシングの妙なのです。

そして、運が良ければ、美しいトラウトの銀鱗が流れの中から輝きを放ちます。

あなたが初めてその瞬間と出会うなら、それがあなたのビギナーズラック、永遠に忘れ得ぬシーンとなることでしょう。

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