太刀魚という魚はどこにでもいる魚ではありません。生息条件が難しいらしく、限られたエリアにしか住んでいないのです。とはいえ、生息場所の近くの釣り人にとっては非常に人気が高く、好シーズンには肩と肩が接するほどたくさんの釣り人が防波堤に押し寄せます。ところが、同じように竿を出しているのによく釣れる人とそうでない人がいます。どこがどのように違うから釣れる・釣れないの差が生じるのかを見てみましょう。
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太刀魚の行動は小魚の動きに左右されます
太刀魚は小魚を食べて生きています。それ以外のものは食べません。そのため、太刀魚は小魚の動きに左右されるといっていいでしょう。いい例がポイントです。太刀魚の食事タイムは夕方〜夜〜朝です。その間に小魚はどのような行動をするかというと、プランクトンを食べるため光の当たる場所や潮目に集まってきます。そのようなところにプランクトンが集まるからです。したがって、太刀魚のポイントもそのようなところで、なおかつある程度の水深が必要です。
次に、時間帯を見てみましょう。小魚が活発になるのは朝夕のマズメで、これはほとんどの魚に共通しています。太刀魚自身も朝夕は活性が高く、食欲は旺盛で、この時間がベストタイムといえるでしょう。それにともなって、大半の釣り人は夕方〜夜半に動きます。朝マズメはそれが終わると太陽が昇り、太刀魚は沖の深みに移動してしまいます。その点、夕マズメだとそれから夜にかけて釣りができますから、長い時間楽しめるのです。
太刀魚は上を向いて餌を探しています
太刀魚の語源は太刀に似ていることともうひとつ、立って泳ぐところにあります。餌を探すときも水中で立ち泳ぎをしており、常に上を向いています。そのため、自分よりも下層にある餌は目に入りません。つまり、仕掛けは上層を流さないと太刀魚は釣れないという意味です。太刀魚の釣り方は何通りもありますが、いずれも浅ダナを釣るのが基本となります。
といっても、四六時中浅ダナを流せば釣れるわけではありません。
太刀魚が接岸してくる時期は夏〜秋で、その間、昼間は沖の深みに潜んでいます。そして、夕方が近づくと餌を食べるため岸に近づいてきます。ということは、早い時間帯は深場にいる可能性が高く、夕方が近づくにつれて浅くなるというわけです。前述したように夕方と朝が最も浅く、夕マズメが過ぎるとタナは次第に深くなります。小魚が潜るからですが、潮の流れなどの理由で再び浅くなることもあります。その結果、夜間はタナが不安定です。1匹釣れたからといって同じタナを流していては追加することができません。
釣り方はテンヤ、ウキ釣り、ルアーの三通り
太刀魚の主な釣り方は三通りあります。それが、テンヤ釣り、ウキ釣り、ルアー釣りです。最初にテンヤ釣りから解説しましょう。これは主にマダイを釣るための方法で、江戸時代に開発されました。仕掛けは単純で、3〜5号のオモリにハリのついたテンヤバリに餌をセットして投入します。この記事は防波堤での釣りをメインにしていますが、テンヤ釣りでは船からの釣りでも非常に有効です。船で沖に出ると日中でも太刀魚はヒットしますが、太刀魚は深場に潜んでいるため仕掛けを海底まで送り込みます。つまり、一旦仕掛けを海底に沈め、そこからシャクりながら巻き取ります。これはルアーと同じ動きです。防波堤で夕方から釣り始めるならタナは浅いと予測して、仕掛けが着水したらすぐ巻き始めます。アタリがなければカウントダウンで少しずつ沈め、タナを探っていきます。
太刀魚が持つ習性のもうひとつの注意点は、速く泳げないことです。なにしろ立ち泳ぎしているのですから、横に泳いでいる魚のスピードにはついていけません。ということは、テンヤを速く引っ張るとと太刀魚はついてこれないという意味なのです。これはルアーも同様で、特に暗くなると速い動きをする餌を食べることはできません。ゆっくりと巻くことが肝心です。
人気は一番……ウキ釣り
テンヤ釣りよりもルアー釣りよりも人気があるのがウキ釣りです。テンヤもルアーも自分の操作次第でタナは変わりますが、ウキ釣りなら最初に設定すればあとはそのままで流れていきます。
仕掛けを紹介しておきましょう。竿は磯竿なら3号を使います。太刀魚の泳ぐ速度は速くありませんが、抵抗は強く、1〜2号では動きをコントロールするのが難しいのです。特に、ドラゴンクラスと呼ばれる大型がヒットすると取り込みに時間がかかり、周囲の釣り人に迷惑をかけてしまいます。道糸は中型のスピニングリールに4号を巻いておきます。オモリは2号前後で餌を一気に落とします。オモリは2号ですが、電気ウキは3号にします。ワイヤーや餌の重さがあるためその分の余裕を持たせます。
太刀魚の歯は鋭いため、フロロカーボンではすぐ切られてしまいます。ワイヤーを結んだハリが販売されていますからそれを使用しましょう。自作するなら管付きチヌバリの6号を使います。ワイヤーの上にはケミホタルをセットしておきます。夜はこの光が大きな役目を果たします。
餌は冷凍魚がメイン
太刀魚の餌は元気のいい小魚に勝るものはありません。しかし、入手や保管に手間がかかることから、現在は冷凍のサンマやイワシ、キビナゴが主流です。小さなキビナゴ、イワシは1匹掛けしますが、サンマは切り身にしてハリに刺します。ウキ釣りで注意したいのは、そのままでは餌が泳いでくれないことです。冷凍餌が泳ぐはずがないと思うでしょうが、仕掛けを引っ張れば餌は横になって動きます。アタリがないときはこの誘いをときどき入れてみてください。
アワセはゆっくりが基本です。太刀魚はくわえるだけでなかなか口の中に入れてくれませんから、ウキが深く沈む、または沖に走るまで待って、それからアワせます。ウキがピョコピョコするだけでそれ以上の変化がないときはゆっくりと仕掛けを張って聞きアワセをしてみてください。早アワセではまずハリ掛かりしません。
まとめ
太刀魚の人気が高い理由のひとつに、食べて美味しいという点が挙げられます。魚を食べる魚は美味しいというのが共通した法則で、青物やヒラメ、ハタ類の例を出すまでもなく皆さんそれはよくご存じでしょう。太刀魚はどんな料理にしても美味しく、だからこそ釣る方もそれだけ懸命になるのです。指三本以上の幅があれば十分刺身にもなります。準備する楽しさ、釣る楽しさ、食べる楽しさと太刀魚釣りは三度の楽しさを味わえます。