グレ(メジナ)

標準和名メジナという魚は関西ではグレ、九州ではクロと呼ばれ、多くの釣り人に親しまれています。海の釣りで一番人気が高いのはチヌですが、磯に限るとグレの方が圧倒的に人気を集めます。理由は、気難しくて大変釣りづらいからです。釣りづらいのに人気があるというと矛盾しているように思うかもしれません。でも、人間という生き物は飽きっぽい性格が強く、小さい魚を100匹も200匹も釣ると満足できなくなります。より大きい魚を釣りたくなるのです。小さい魚に比べて大型の魚は絶対数が少なく、警戒心が強いためサシエサを食わせるのが格段に難しくなります。言い換えるなら、大型のグレを仕留めた釣り人はその難しさをクリアした、つまり高いスキルを持っていることの証明になるのです。

 

グレ釣りの魅力その一…取り込むのが難しい

チヌは大都市近辺の漁港で大型が期待できるし、姿が美しいとあって人気が高いのはうなずけます。しかし、針に掛かってしまえばもう釣り上げたも同然です。この魚は泳ぐのが得意ではなく、スピードもパワーも二級クラスです。それに引き換え、グレのそれは一級です。特に、尾長の大型はパワーもスピードもケタ外れで、初めて遭遇した釣り人の大半はバラしてしまいます。

また、グレという魚は危険を察知すると岩に貼りつくという習性があり、せっかく食わせても油断すると貼りつかれて取り込めなくなります。それを防ぐには、アワセて針に掛かったらすぐグレの頭をこちらに向け、腰の強い竿で一気に浮かせる必要があるのです。ところが、グレが住んでいるのは根の周りで、位置や引っ張る方向によっては岩でハリスや道糸にキズが入り、そこから切れる可能性が高くなります。現在は技術の進化が進んでハリスや道糸は10年前、20年前に比べてかなり強くなっているものの、キズが入ると極端に弱くなります。

といって、仕掛けが太いとサシエサの動きを妨げることが多く、グレの機嫌が悪いとそれを気にしてなかなか食わないケースが珍しくありません。そのため、ハリスの太さはぎりぎりのサイズを選択しなければならないのです。このぎりぎりとは、グレが食ってなおかつ自分が取り込むことのできるサイズと解釈してください。

 

グレ釣りの魅力その二…タテとヨコで合わせる

グレは非常に臆病です。音や光、不自然な動きに敏感で、異常を感じたらすぐ物陰に逃げ込みます。そのようなグレにサシエサを食わせるには、コマセを使って釣りやすいところにおびき出さなければなりません。この「どれだけおびき出されるか」というのはグレの活性と警戒心に大きく関係しています。警戒心が弱く食欲が旺盛であればコマセに誘われて住みかから遠くへ出てきます。反対に、警戒心が強くあまり食欲がなければ住みかからは少ししか出てきません。

このように、その日、その時間のグレのご機嫌をうかがって居場所を予測します。グレの住みかはどこにあり、そこからどこまで出てくるか見当をつけて、潮に乗せてそこへ仕掛けを送り込みます。これがヨコで合わせるという意味です。以前はグレの警戒心が強くなく、朝夕のマズメやサラシの中では簡単に食わせることができました。しかし、今はそういう時代ではありません。飽食状態にあるグレはなかなかコマセでコントロールできないのです。

グレにはもうひとつ大きな厄介な問題があります。遊泳層=タナが変わるということです。魚は種類によって遊泳層が異なります。底近くを泳ぐ魚もいれば表層しか泳がない魚もいます。グレはというと条件によって上下します。これは面倒です。水温が下がって食い渋ったときは住みかから出てきませんから、深いところでは20mのウキ下でヒットすることがあります。反面、水温が高くて潮が動いていると動きが活発になり、1〜2mという浅いタナで食う場合もあります。

そのため、状況を読んで現在のタナはこれくらいだと予測し、それで仕掛けを流してアタリがなければ深くしたり浅くしたりして、グレのタナを探らなければなりません。これがタテで合わせるということです。

 

グレ釣りの魅力その三…コマセとサシエサを同調させる

グレ釣りが難しい理由はまだあります。基本的に、グレはウキを使って仕掛けを流すというフカセ釣りという方法で狙います。このとき、針に刺した1匹のオキアミだけを流しても魚はなかなか興味を持ちません。ある程度まとまった量を撒くと小魚が反応し、その動きをみてグレも動き出すのです。これがグレ釣りにおけるコマセの役割です。匂いで小魚を寄せ、グレを活性化させるといってもいいでしょう。

ただし、活性が高い場合はコマセを撒くと住みかから遠くまで出てくると前述しましたが、同様に活性が高いとサシエサがコマセから離れていてもグレは食います。反面、食い渋ったときはコマセの中にサシエサを紛れ込ませないとなかなか食ってくれません。それが同調ということです。グレはタテとヨコで合わせないとヒットしませんが、同時にそこでコマセと同調させないといけないのです。もちろん、海の中の出来事ですから目には見えません。10秒後のコマセの位置を予測、それにタイミングを合わせて仕掛けを流し込みます。

すべては頭の中でイメージを描き、ヒットしなければどこかがずれていると判断して修正していくのです。多くの釣り人はオキアミに配合エサを混ぜたコマセを用いますが、そうすると海中で広がりやすく、同調しやすいからと思っていいでしょう。

 

最初は堤防から始めましょう

グレ釣りの難しさを解説してきましたが、いうまでもなく最初から誰もがすべて完璧にやれるわけではありません。高いスキルを身につけるには段階を追ってステップアップする必要があります。グレ釣りに入門するにはやはり堤防から始めた方がベターでしょう。いきなり磯からスタートするには、釣り以外のチェック項目が多く、なかなか釣りに専念できません。堤防はエサ取りが非常に多いという特徴はあるものの、おおむねグレの住みかは足元の捨て石であることが多く、ポイントの目安をつけやすいのです。

一般的な堤防で釣れるのは小型のクチブトが中心で、30㎝を超えるサイズはほとんどヒットしません。小型はおおむね警戒心が弱く、針に掛けるのは簡単なので初心者にはうってつけでしょう。しかし、潮が止まるなど条件が悪くなると途端に食い渋るようになります。グレのそのような習性を身をもって体験してください。

 

まとめ

グレは条件によっては簡単に食ってきます。ところが、ひとたび機嫌を損ねるとなかなか食ってくれません。そのような食わない状況の中で良型のグレを次々と仕留めると、周囲の釣り人から賞賛の拍手を浴びるでしょう。いずれはそうなることを願ってグレ釣りを楽しんでください。

 

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