アオリイカの釣り方には三通りあります。現在、最も人気が高いのはエギングで、餌木さえあれば気楽にどこでも釣りができるという手軽さが人気の秘密でしょう。しかし、餌木は作り物にすぎず、どのように工夫してもイカがまったく興味を示さない場合もあります。
その点、小アジをエサにすると本物の魅力でヒット率は格段にアップします。そのアジをエサにした釣り方にはヤエン釣りと泳がせ釣りという二つの方法がありますが、ここではヤエン釣りを紹介しましょう。
>>Contents
エサの小アジにハリは付けない!
竿・糸・ウキ・オモリ・エサ・ハリを釣りの六物(りくもつ、ろくもく、ろくぶつ)と呼び、昔からこれがなければ釣りはできないといわれていました。しかし、ヤエン釣りではウキもオモリもハリも使いません。ハリスも不要です。したがって、仕掛けは非常に単純です。道糸の先に小アジを結ぶだけです。
だからといって、それだけではアオリイカを釣り上げることはできません。イカが小アジを食べにきても、それを引き上げようとしたときにハリがなければイカはすぐ逃げてしまいます。そこで、ヤエンという掛けバリを道糸に通して先端まで落とし、イカに引っ掛けるという釣り方です。エサにハリを刺してそれを魚に食べさせ、そのハリで魚を釣り上げるという一般的な釣りとは大きくかけ離れています。ヤエン釣りとはそんな釣り方であることをまずは知ってください。
仕掛け
ヤエン仕掛けにヒットするアオリイカは時期にもよりますが大型が多く(春がメインです)、その引きは相当に強いと思っていいでしょう。その引きに対応するには太めの仕掛けが欠かせません。
竿
磯竿、万能竿の1.5〜2号、4.5〜5.3m
リール
スピニングリール2000〜3000番
ヤエン釣りではドラグをよく使います。ヤエン釣り専用のリヤドラグタイプがあれば便利です。
道糸
ナイロン、またはフロロカーボンの1.5〜2号
エサの小アジを底に沈めるには比重の大きいフロロカーボンの方が有利ですが、根掛かりしやすく、アジに負担がかかるという弱点もあります。
エサ
なんといっても小アジが一番で、10〜15㎝の手頃なサイズで元気のいいものが入手できればアタリの出る確率は非常に高くなります。近年はヤエン釣りが普及して、この小アジを販売している釣具店が増えて入手しやすくなりました。大体1匹が100〜200円で販売されているようです。夏〜秋は自分で釣ることも可能です。サビキ仕掛けに掛かったスズメダイやベラ、ネンブツダイにもアオリイカはヒットします。
生きているアジがどうしても手に入らないときは冷凍物も使えます。生きているアジよりも大型がヒットする確率が高いという報告もあります。また、アジは身が軟らかく、イカが抱くとすぐボロボロになりますが、皮の硬いコノシロは何度も使えます。販売されていればぜひ試してみてください。
ヤエン
ヤエン釣りが普及するにつれて各メーカーがさまざまなヤエンを販売しています。道糸の滑りがいいようにローラーがついたもの、イカに辿り着いた時点で自動的にイカを挟む挟み式などさまざまな機能を持つヤエンが開発されています。実際に使ってみてどのようなメリットがあるかは自分で確かめる必要がありますが、基本的な知識だけは仕入れておきましょう。
最低限知っておきたいのはサイズです。これはイカのサイズに合わせるもので、S・M・Lと3種類ありますからできればすべて揃えて釣り場に持参します。サイズによって内蔵オモリは違います。大体0.5〜1号の範囲でセットされているようです。
イカ釣り用の傘バリをカンナといいますが、ヤエンに付属しているカンナはさまざまなタイプがあります。シングルやダブル、また2本バリを何か所にもセットしたりとこれもいろいろな商品があります。最初はどれを使えばいいか迷うでしょうが、釣具店で相談するなりしてとにかくどれでもいいからひとつを選んでください。そして、実際に使っているうちにどのようなものかがわかってくるでしょう。
アジは優しく泳がせましょう
エサのアジは尾鉢(尾ビレの付け根)に道糸を結びます。チヌバリ2〜3号を結んでゼンゴの部分に刺してもいいでしょう。
アオリイカは夜間は浅場に浮上することもありますが日中のタナは深いことが多く、アジは海底付近を泳いでくれた方がヒット率は高くなります。しかし、それを妨げるものがふたつあります。
①疲れると潜ることができません
元気がいいうちは深く潜りますが、そのうち疲れてくるとアジはだんだん浮いてきます。ということは、アジはできるだけ長い時間元気で泳がせた方がいいわけです。結んだアジはそっと海に沈めましょう。
②道糸の重さをアジにかけないように
小さいアジにとって道糸の重量は負担になります。投げ釣りのように竿先を高くして置き竿にすると重量がモロにかかりますから、竿は水平、または竿先を下げてアタリを待つようにします。通常の竿掛けでは竿先を下げるのは無理ですが、ヤエン釣り専用ならそれは可能です。常に竿を手持ちにして、それで好成績を上げているベテランもいます。
アジのアタリとイカのアタリ
最初はドラグを最少限にしておきます。一番緩い状態に設定しておけば、イカが近づいた時点で危険を感じたエサのアジは逃げ惑い、ドラグから道糸を引き出します。それが最初のアタリです。そして次の瞬間、すごい勢いで道糸が出て行きます。それがイカのアタリです。イカのサイズによって速度と走る距離は変わりますが、これはアオリイカが安心してエサを食べるところまで運んでいるといわれています。したがって、この時点ではできるだけ抵抗をかけずにイカを走らせることに心がけてください。ヘタに抵抗を与えるとイカがアジを離してしまうからです。
イカが安心して食べられるところに到着するとそこで走りは止まります。そこから釣り人とイカの「かけ引き」が始まります。
ヤエンを投入する前にイカを引き寄せます
イカが走って止まったところは釣り人から遠い地点である場合がほとんどです。そのため、そこでヤエンを投入してもイカに達することはまずありません。道糸の中間でヤエンは海底に沈んでしまうからです。そこで、確実にイカまでヤエンが届くようにイカを引き寄せ、道糸に角度を持たせます。
この段階が最もハラハラドキドキする瞬間です。強く速く引き寄せるとイカはアジを離してしまいます。ゆっくりと少しずつ引き寄せなければいけないのですが、その前に引き寄せるタイミングというものがあります。イカが止まったらすぐ引き寄せていいわけではありません。アオリイカは魚を抱いたらカラストンビ(額板=がくばん)で延髄に一撃を加え、そこから頭を切り落とします。それからゆっくり食べ始めるので、引き寄せるのはそれからです。食べることに夢中になっているイカは引き寄せられても気にしないというわけです。
目安は道糸と竿の角度が45度
ヤエンがスムーズに滑り落ちるのは道糸と竿の角度が45度になったところです。それより角度をつけるとヤエンが早く落ちてイカにショックが伝わり、アジを離してしまいます。つまり、引き寄せすぎてもよくないということです。とはいえ、そのタイミングは非常にわかりづらいものです。根掛かりが少なければ、早めにヤエンを沈めておいてそこまでイカを引き寄せるという方法もあります。ビギナーにはこちらの方がわかりやすいかもしれません(根掛かりすればまずイカは取り込めません)。
45度の角度になれば道糸を手に取り、ヤエンのラセン部分から道糸に通します。そして、イカに達するまで滑り落とします。ヤエンが底に届けばコツンという反応があります。
ソフトな優しいアワセを
ヤエンが沈み切った時点でドラグを締め、アワセを入れます。カンナはどこに刺さるかわかりませんし、刺さりどころによっては強くアワセると身切れを起こす可能性があります。ソフトなアワセを心がけてください。ハリに掛からなかったときは一旦巻き取り、すぐ同じ地点に投入します。アジは半分かじられていても構いません。エサを途中で奪われたイカはすぐに反応し、そのアジに飛びつく可能性が高いのです。
ヤエンに掛かればゆっくり引き寄せます。アワセと同様、取り込みもソフトにを心がけます。イカが大きいと予想外に強く引きます。この引きもヤエン釣りの魅力のひとつで、手近の防波堤でこれほど強い引きに遭遇することはめったにありません。イカが走れば道糸を送り、慌てず、無理をせず落ち着いて引き寄せ、最後は玉網で掬いましょう。
まとめ
ヤエン釣りが人気を集めるのにつれて困った問題が生じています。ヤエン釣りのファンである「ヤエン師」は1パイでもたくさん釣るために1本でも多い竿を出し、その結果ポイントをひとりで占領してしまうのです。特に、ポイントを次々と移動してゆくエギングファンの反感を買っているようです。大都市近郊は釣り人が多く、逆に好釣り場は少ないためこのような状況が発生しているようですが、同じ釣り人同士です。最低限のマナーを守って釣りを楽しんでください。